技術情報

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開発者コラム

図研エルミックのエンジニアが開発にまつわるコラムを書いています。


 

2009年 news67号

2009/10/01

後工程はお客様

製品開発第四部一課 M.K

『後工程はお客様』という言葉、これまで耳にされた方もおられるでしょう。

自分の仕事の結果を受け取る人たちは、誰であってもお客様であると思い、常に最善を尽くさねばならない、との意味です。生産現場などでは、特に知られる言葉です。メーカの設計部隊からキャリアをスタートした私も、全社的な集合研修の場などでは繰り返し聞かされたものでした。とはいえ当時の私には、あまり現実感を持ったフレーズとして響いてはこなかったのも事実です。

バブル真っ盛りの中、新卒で某電気メーカに入社した私は、自社製マイクロプロセッサの開発部門に配属されました。そこでCPM周りの制御系やら演算回路も含め、諸々の回路の設計に携わっていました。当方の手を経た回路たちは、その後論理合成担当者やレイアウト設計の担当者などの元へと渡っていきます。

当時の私にとって『後工程』であった彼らは皆、同じ部署内の先輩技術者でした。入社間もない若造に比べ遥かに熟練した先輩方は、たまには叱ることこそあれ、私のミスにも総じて寛容であったと思われます。当時の私は『後工程はお客様』を実践できず、親しい先輩達に甘える劣悪エンジニアだったと認めざるを得ません。

現在私が携わるハードウェアデザインサービスでは、多くの場合RTLという手法を用います。RTLの大きなメリットの一つとして、可読性のよさが挙げられるのはご存知のところでしょう。可読性とは要するに、他人が読んだときの解りやすさのこと。裏を返せば、設計者にとっても書きやすい、作りやすい手法であるといえます。

既に広く用いられているRTLが持つ、このとっつきやすさのため、設計者に求められる技量が下がったかのように思われがちです。実際に論理合成ツールが随分と賢くなった現在、割と低品質なRTLでもそれなりの回路が出力されるのも確かです。設計者に要求される技術的ハードルが、その分下がってきたようにも思われてしまいます。

また、可読性のよさは、流用のしやすさも生みました。他人が読みやすい=他人が手を入れやすいわけで、このような再利用性の高さも、現在では広く世の中で受け入れられています。弊社でも、お客様の保有するRTLを基にエンハンスメントを行う業務も受けることがあります。このようにRTLは、他人の目に触れる機会が飛躍的に増えてきているのです。

技量の劣るエンジニアによるRTLは、多少論理性に長けた人ならすぐに見分けがつきます。冗長な論理や無駄な記述など、みれば吹き出してしまう代物が見受けられるのも現状です。あまりに低質なRTLは、条件が変わった際、実機動作に悪影響を与えるケースがあり、笑ってばかりもいられません。

RTLにはヘッダ、コメント等が含まれていて、ほとんどの場合、会社名や設計者の名前が記述されています。「恥ずかしいレベルの記述しかできない奴」、と自らの知らないところでレッテルが貼られている。こういうケースの存在を設計者は知っておくべきでしょう。『後工程』の範疇には、巡り巡って設計者自身も含まれていることになるからです。設計者としてのプライドを保つため、求められた仕様さえ満たせばいいとの発想ではなく、常に最善を尽くす心構えが必要と思われます。

『後工程はお客様』
自らの誇りもお客様、と換言することができるかもしれません。

 
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